マーケッティングの世界で高く評価されているフィリップ・コトラー(1931年生まれ)は「企業は、製品の製造だけではなく、顧客を創造し、顧客価値を高め顧客満足を高める必要がある」と指摘しています。言い換えれば、顧客が気づいていない潜在的なニーズを見つけ、そのニーズに応えるということです。

そこで今稿からは、空家の活用を考える前提として「人々(顧客)が気づいていない未知の顧客欲求」を探ってみたいと思います。

「都市生活者のよりよい生活の実現」を目的に都市生活研究を行なっている公益財団法人ハイライフ研究所では、永年に亘り「都市を中心とした生活者のよりよい生活の実現・構築へ向けた調査研究」を行っています。2011年におこなわれたセミナー「2020年の都市居住、その佇まいを探る~持続可能な都市居住をめざして~」では、2020年までの日本社会を覆う時代感を次のように表しています。

「いままでの価値観(経済性、合理性、消費社会など)が淘汰され、新しい価値観(人間性、共生性、地域貢献、安全など)が芽吹く」

「ひとり世帯が多数派を占める社会は「さみし」時代かもしれない。しかし、大家族主義や生活共同体という閉じられたコミュニティには、もう、戻れないし、戻らない。」

「「人間交流の場」をコミュニティと捉えれば、一人ひとりの個人はいくつものコミュニティに所属することになる。そのコミュニティで個人は様々な知見や知識を得ることになる」

「国や行政など官的なものが弱体化する。風雪から守ってくれた大樹から、雨風が降り注ぐのに気付き、自らの身を自らで守ることを覚悟する。そのための知恵をこつこつと蓄え始める。」

「老いも若きも、男も女も、誰もが生涯ワーカーとなる。働くことが苦役ではなく、楽しみになる働き方が広がり、企業の枠組みを超えた個人同士の連携が進む。そこでの発見が新しいビジネスを創り出していく。」

「居場所を見つけ力を蓄えた個人は、ひとりひとりが自らの居場所で主人公となり、暮らしや生活を楽しむための知恵を発揮していく。」

そしてこの時代感の中で、都市生活者の意識変化の兆しを2つのキーワードで表しています。

キーワード①「ソーシャル意識(人間交際意識)」

市民は社会市民、地域市民としての役割を自覚し始め、個人の利益よりも国民全体の利益を大切にすべきと考える人が増えている。

キーワード②「個力(自分力)」

国や行政の力が弱まり、将来を不安視し自分がしっかりしなければと考える人が増え、個人の力で相互扶助や連携を活発化させたり「自分力」の強化・向上に向け、情報や知識や知恵を蓄え始めている。(以上、榎本元(株式会社読売広告社 都市生活研究所所長)講演より引用・要約)

2017年現在もこの時代感と2つのキーワードは、都市生活者の意識変化を的確に捉えていると思われます。

また野村総合研究所が3年毎に行っている調査では

「日本に於いては、リーマンショックや東日本大震災を契機に、人々がサステイナブルな暮らしへの憧れやエシカル消費への志向が強くなっており、さらに地域への貢献や家族や地域社会など、身近な人との絆を求める気持ちも強まっている。そしてこの傾向は今後も強まる」と報告されています(野村総合研究所2012年「生活者1万人アンケート調査」より引用・要約)。

これらの調査からは、人々の自分らしい生き方への希求や地域社会への繋がりを求めている意識が高まっていることが伺えます。

株式会社ナカムラ建工
代表取締役 中村靖雄
日本工業大学専門職大学院
技術経営(MOT)修士