◇長寿命化する人類

「LAFESHIFT」という書籍が話題を呼んでいます。

この本の中でロンドン・ビジネススクールの2人の教授が、人類の長寿命化で迎えつつある人生100年時代を、古い価値観のままで生きることへ警鐘を鳴らしています。

統計上は人間の平均寿命は過去200年間延び続けており、1840年代以降データがある中で最も長寿の国の平均寿命は、1年間に平均3カ月のペースで上昇しているそうです。これは10年ごとに2~3年寿命が伸びている計算になります。さらにそこから平均余命を算出すると、1957年生まれの50%が94歳まで生き、1987年生まれでは100歳、2007年生まれでは50%が104歳まで生きると考えられているそうです。

人類の平均寿命の上昇には、健康・栄養・医療・教育・テクノロジー・衛生・所得といった多分野での改善が関係していると考えられていますが、その結果単に長寿命化しているのではなく「不健康期間が短縮している」という研究結果もあります。ますます健康に暮らすことの重要度が増しています。そして長寿命化する人生に合わせて、人生のライフサイクルも変化しています。従来のライフサイクルでは-20歳まで勉強し、40年間職場で勤め上げ、最後の20年間を年金で暮らす-という3つのライフステージが標準的なライフサイクルでしたが、人生100年になるとこの20-40-20というライフサイクルが崩れ、新しいライフステージが出現するようになると論じています。そこでは新しいステージへの移行が頻繁になり、多くの人が80歳まで働くことが求められ、急速に変化する労働市場に対応する為に、新しいスキルを身につけることと新しい知識の学び直しに投資することが必要になると言います。そして今からでもその為の準備をする必要があると提案しています。さらにその準備に必要とされているのは金銭的な資産はもとより「見えない無形資産」が大きな役割を果たすと指摘しています。

◇マルチステージ化に必要な「見えない無形資産」

それでは人生のマルチステージ化を実現する為に必要な「見えない無形資産」とは何でしょうか。本書の中では、見えない無形資産として3つのカテゴリーに分類しています。

一つ目は「生産性資産」といい、仕事の生産性を高め所得を増やすのに役立つ要素のことです。具体的には仕事にスキルや知識であり、新しいアイデアやイノベーションを生み出す源泉ともなるものです。

二つ目は「活力資産」。肉体的・精神的健康、そして心理的幸福感のことです。ハーバード大学の研究では良い関係のコミュニティとの関わりの多さが、高齢になった時に活力を生むことに影響しているとの研究結果も紹介されています。

三つ目は「変身資産」といい、100年ライフを生きる過程の中で、文字通り変身するために必要な資産のことです。具体的には、多人性に富んだ人的ネットワークや新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていることと定義されており、従来の3つのステージではあまり必要とされていなかったものです。

今後このような考えは人々の考え方に大きな影響を及ぼしてくるでしょう。特に三つ目の「変身資産」という考え方は少子高齢化が進む日本に於いては益々重要になると

思われます。今までは主に長寿命化のネガティブな側面が語られていましたが、世界の超高齢化社会の先頭を進む日本人こそ、社会全体で知恵を出し合って長寿命化を楽しむモデルを世界に示したいものです。

株式会社ナカムラ建工
代表取締役 中村靖雄
日本工業大学専門職大学院
技術経営(MOT)修士