ここからは空家問題について説明します。

空き家の定義は、空き家対策特別措置法第2条1項に「空き家等とは、建築物またはこれに付随する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地をいう。」とあり、目安としては1年間使用されていない建物を指します。そして空き家の数は総務省統計局の「平成25年住宅・土地統計調査」によると全国で820万戸も存在し空き家率は13.5%となっています。このままでは2030年には100万戸を超え、空き家率も15%を超えると推計されています(図表)

空き家が増える主な原因としては、建物を撤去すると税法の特例が適用されなくなり、土地の固定資産税が一気に6倍に上がることなどが挙げられています。例えば相続を受けた古家を解体したくても、多額の解体費用をかけてなおかつ固定資産税が6倍になってしまうのでは、所有者の経済的負担は大きなものになってしまいます。しかしながら現在、このような倒壊の危険性の高い建物は、空き家対策特別措置法のもとで強制撤去への流れができつつあります。一方、行政による空き家の活用に関しては遅々として進んでいないのが現状です。平成27年度の国土交通省・総務省による全国の47都道府県と1741市町村を対象にした調査によると、平成27年10月1日の時点で「空き家協議会」の設置団体は2%、「空き家対策計画」を策定済みの団体は0%となっている。平成27・28年度の予定を含めても「空き家協議会」の設置は30%、「空き家対策計画」の策定は24%にとどまっています。筆者が独自に葛飾区へのヒアリングを実施したところ、葛飾区に於いては空き家の活用については平成27年度内に空き家対策計画の策定を目指しているとの回答でした。さらに、現実的には空き家の活用に関しては行政の施策には限界があり、民間の活動を期待している旨の話を受けました。

株式会社ナカムラ建工
代表取締役 中村靖雄
日本工業大学専門職大学院
技術経営(MOT)修士