わが社では、国が発表する空き家戸数とは別に居住者にとっては余剰スペースが多く、すでに居住に適さない状態になっている建物を「潜在的空き家」と名付けています。

例えばパートナーが亡くなり高齢者が単身で居住している持ち家高齢者単身世帯などがこれにあたります。単身世帯ではあるので現時点では空き家ではありませんが、居住者が本来選択したい子供たちの近隣への居住や地方への移住が選択できずに、しかたなく現在の家屋に縛られている状態を指します。この他にも、本来共働きでの収入を想定して購入した住宅が、何らかの理由により単身で住むことになった上、高額の住宅ローンを一人で背負うようになったケースなど、所有者の意向に反して、止むを得ず現在の住居に縛られている状態などは、全て「潜在的空き家」の定義に入るものとします。

一昔前までは、家は一生住み続けるという考え方が一般的でありましたが、現代社会に於いては住まい方の変化がより流動的になっており、住居に対するフレキシブルな考え方が広がっているようです。さまざまな住まい方のニーズに対応する新しい受け皿(シェアハウスなどもその一例です)が求められていると思います。

この「潜在的空き家」の数を把握した直接的な統計は存在しませんが、国や各市町村で発表している各種統計調査より推計をすることは可能です。

仮に葛飾区の潜在的空き家数を推計をしてみます。

各種統計データより、葛飾区の総世帯数を21万世帯、持ち家率36%、高齢者単身世帯率10%とすると

210,000×0.36×0.1=7560戸

という数字が導き出せます。

平成25年度の総務省統計局の調査による葛飾区内の空家数が2950戸(賃貸、売却用、二次的住宅を除く)と比べても、潜在的空家の数はかなりの数になることがわかります。

このように空家問題には、住宅ストックの増加というハードの側面と、人の住まい方の変化への対応というソフトの側面があります。

そう考えると、現在のお住まいが空き家になってからではなく、空家になる前から住まい方の変化への対応を事前に検討することも大切ではないでしょうか。

株式会社ナカムラ建工
代表取締役 中村靖雄
日本工業大学専門職大学院
技術経営(MOT)修士